研究テーマ

ナノ構造複合膜を用いた高性能電子エミッターの開発
電界放出型の電子エミッターを用いた真空微小デバイスは、高効率、省電力、小型化が可能などの潜在的利点を有する。一般に高効率な電界放出材料には、トンネル障壁を低減させる低い仕事関数と局所電界を増す鋭利な表面形状が求められる。多層グラフェン構造体の炭素ナノウォール(CNW)は鋭利な表面形状を有するが、密に生成したウォール間で電界遮蔽効果が生じ易いため、CNW本来の優れた電界放出特性が得られないことが課題である。我々のグループではナノ結晶ダイヤモンド(NCD)膜など平坦な膜との複合化により、ウォール間隔を増加させ、電界遮蔽効果を抑制することに成功している。
本研究では、マイクロ波プラズマCVD法を用いて、新たにナノウォール表面を金属ナノ粒子あるいはNCD粒子により修飾したナノ構造複合膜を形成し、電界放出特性を調べる。電界強度分布をシミュレーションにより予測し、高効率な電子エミッターの設計指針を見出すことを目的とする。
ナノウォール/金属ナノ粒子、ナノウォール/NCD粒子の形成に成功し、電界放出性能と安定性の向上を実証した。実験とシミュレーションを通して、局所電界が効率的に増加することを見出した。
Y. Kaneko, K. Terada, K. Teii, Field Emission Characteristics of Metal Nanoparticle-Coated Carbon Nanowalls, Nanotechnology 31, 165203 (2020).
Y. Kaneko, K. Terada, K. Teii, Enhanced Field Emission from Metal-Coated Carbon Nanowalls, Jpn. J. Appl. Phys. 58, 118002 (2019).
ナノ粒子シーディングのための化学表面処理法の探索と応用
ナノ結晶ダイヤモンド (NCD) 膜は、アモルファス炭素にダイヤモンドナノ粒子が分散したナノ構造複合膜であり、低い摩擦係数、高い生体親和性、高い光吸収係数、高い電気伝導性など、単結晶ダイヤモンドよりも優れた諸特性を示す。Siなどの異種基板上にプラズマCVD法を用いてNCD膜を堆積させるには、一般にダイヤモンドナノ粒子を用いたシーディング / スクラッチなどの堆積前処理が必要である。広く用いられている超音波振動によるシーディング / スクラッチ処理では、得られるNCD膜の均一性が低いことが課題であった。
本研究では、NCD膜の均一性向上を目的とし、シーディング / スクラッチ処理前に化学物質を含む混合溶液中で基板表面処理を行い、得られたNCD膜の表面形態、構造、電気伝導特性等について評価を行った。
化学混合溶液中で基板表面処理を行い、ダイヤモンド粒子と基板に異なる符号のゼータ電位を持たせることで、基板上に粒子を一様に分散させることに成功した。本手法を用いることで、従来法に比べ、NCD膜のn型伝導性の向上と表面粗さの低減に成功した。また優れた電界放出特性を示すNCDと炭素ナノウォールから成るナノ構造体の形成にも成功した。
泥谷, 黄, 堤井, 均一なナノダイヤモンド膜形成のための基板への堆積前処理, 日本セラミックス協会2021年年会
高温誘電体・キャパシタ―の研究
パワーエレクトロニクス分野において、高温環境下でも安定動作が可能なコンデンサ用誘電体材料が求められている。しかし現行のコンデンサは200 ℃以上で容量や絶縁性が低下するため、高温環境に対応できない。六方晶窒化ホウ素(h-BN)は約6 eVのワイドバンドギャップ、高絶縁性、高温耐酸化性などの優れた諸特性を有する物質である。
本研究では、表面波プラズマCVD法を用い、低エネルギーイオン衝撃下でイオン照射エネルギーを制御することによって高密度なh-BN膜を形成し、その構造制御と電気特性評価を通して、高温用誘電体材料としての応用可能性を検証することを目的とする。
イオン注入のしきい値より少し高いイオン照射エネルギーにおいて、最もsp2構造の結晶性と規則性が向上することを見出した。またsp2結合の結晶性等が高いほど絶縁性(抵抗率)が増加すること、その際150 ℃以上の高温でも絶縁性が比較的維持されることが分かった。
Y. Kamimura, M. Torigoe, K. Teii, S. Matsumoto, Electrical Insulation Characteristics of Metal-Insulator-Metal Structures Using Boron Nitride Dielectric Films Deposited with Low-Energy Ion Impact, Mater. Sci. Semicond. Process. 121, 105353 (2021).
Y. Kamimura, T. Matsuura, K. Teii, S. Matsumoto, Effect of the Boron-to-Nitrogen Ratio on Leakage Current Characteristics of Boron Nitride Films Prepared by Surface-Wave Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition, Thin Solid Films 706, 138029 (2020).
バイオ機能材料・デバイスの開発
医療および補綴用人体インプラントの表面は、耐摩耗性のみならず、生体物質に対する耐性と生体細胞への親和性が同時に求められる。
本研究では、独自の低エネルギーイオン衝撃下でのプラズマCVD法によって、高品質な立方晶窒化ホウ素(c-BN)膜を形成し、その表面状態を制御することで、生体親和性に優れた超硬質バイオ機能材料・デバイスへの応用を目指す。
プラズマ表面処理によってc-BN膜表面は親水化し、優れた生体親和性を示すことを実証した。
J. H. C. Yang, K. Teii, C.-C. Chang, S. Matsumoto, M. Rafailovich, Biocompatible Cubic Boron Nitride: A Noncytotoxic Ultrahard Material, Adv. Funct. Mater. 31, 2005066 (2021).

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