熱電変換材料-1
熱電変換とは?
物体の両端に温度差を与えると、超伝導体以外なら必ず起電力が生じます。この現象はゼーベック (Seebeck) 効果と呼ばれ、これを身近に利用しているのが、温度測定に用いられている熱電対 (thermocouple) です。物体の高温端と低温端に外部回路を接続すれば、この熱起電力により電流を発生させ、電力として取り出すことができます。熱電対には異種の金属線を接合したものを使いますが、発電用にはn型とp型の半導体(→半導体とは?)を組み合わせて右図のような熱電素子を作製し、取り出す電力を増大させます。金属よりはるかに大きな熱起電力が得られる半導体を使って、固体素子のみで熱エネルギーを電力に直接変換するのが熱電発電です。
熱電発電は、第二次大戦中の独ソ戦線で、焚き火を熱源とするパルチザンゲリラの通信機電源として最初に実用化され、「パルチザンの飯盒」と呼ばれました。当時の変換効率は1.5〜2%程度だったと言われますが、通信機を駆動するには十分だったようです。
これとは逆に、異種の物質を接合して電流を流すと、接合点で電流の向きに応じて可逆的に熱が発生または吸収されます。これをペルチェ(Peltier)効果といい、ゼーベック効果とは表裏一体の熱電現象です。電流を反転させるだけで可逆的に加熱と冷却が可能で、応答速度も極めて速いので、熱電冷却や電子冷熱と呼ばれ、半導体レーザや高感度の赤外線検出器やCCDなどの冷却、さらに半導体製造プロセスや医療機器など、精密な温度制御や局所的な急速冷却が要求される分野に広く利用されています。ミニバンなどのRV車に載せる飲料の保温・保冷庫や、コンプレッサーの騒音を嫌うホテル客室用の無音冷蔵庫としても実用化されていますし、さらには無振動で温度変動がほとんどない点を買われて家庭用のワインセラーとしても好評です。最近では、コンピュータのCPUが発生する大量の熱を迅速に除去して飛躍的な高速化を実現するためのマイクロクーラーへの応用も期待されています。これら二つの熱-電気のエネルギー変換過程を総称して熱電変換(thermoelectric conversion)と呼びます。